onigiritobanana’s blog

本の感想や日々感じたことを書きます

本の感想「わたしのマトカ」片桐はいり

就職活動でヘロヘロになり、もうダメかもしれない、と心が折れかけている時に読んだ。

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クスッと笑える軽快なユーモアがありつつ、しっとりと情緒的な感情のこもった片桐はいりさんの文章。食べ物や街の様子、そしてフィンランドの人との交流など、気づいたら引き込まれていて、自分もフィンランドにいるみたい。

ファームステイの話は、どこか懐かしくて自分の記憶と重ね合わせながら読んだ。異国に流れる空気感、その土地でしか味わえない温度。肌で感じた質感まで色々な思い出がぶあっと蘇ってくる。

ご自身の興味関心・好奇心でズンズン進んで何事もひょいと飛び込んでいる姿に憧れた。好きなことや自分のルールもはっきりとある人で、ハッピーもアンラッキーも軽やかに舞う。人に対して真摯で茶目っ気がある眼差し、どっしりとした懐の深さ。こんなふうに生きてみたい。ベンチマークしている方が何人かいるのだけれど、はいりさんもそのうちの一人となった。

うんうん苦しんでいたことなんてすっかり忘れたみたいに、私の心はヘルシンキの夏のように晴れ晴れとした。こんなに気持ちが軽くなるんだと驚いた。人生はとても長くて暗い真っ暗なトンネルだ。だけど、本はそんなトンネルに差し込む一筋の光になる。時には柔らかに少し目の前を照らすキャンドルのように。本があるならこれからの人生もなんとか歩いてゆけるかもしれない。